「いずい(方言)」の意味や使い方は?悲しい語源やびっくり習慣も!

方言

「いずい」は私の住む北海道の方言かと思いきや、宮城県、岩手県など東北地方の皆さんも、やすやすと「いずい」を使いこなしているようです。

使い慣れるまで時間がかかりますが、いったん体得できればこんなに便利な方言はありません。

「いずい」を使わずに一日過ごせと言われたら、ただでさえボキャブラリーの少ない我が家はシーンと静まり返ることでしょう。

そして昔は、若い娘さんが「いずい」なんて言おうものなら大変なことになったようです。

ちょっと悲しくなるような使われ方をしていたこともありました。

この記事では、「いずい」の意味と語源、そして北海道で「いずい」を使うタイミングについて、また昔はどのような場面で使われていたかをご紹介します。

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「いずい」の基本的な意味は?

「いずい」体のなんとも言えない違和感を言い表す時に使います。

「イズイ」

[異物感があって)窮屈(きゅうくつ)であるさま・気持ち悪い]

≪標準語ではその意味を一言では言いあらわせない方言の一つ。/異物によって体に感じられるなんともいえないかゆさや不快感を言うことばである。室町時代の文献から見られ、語義は「恐ろしい」、「薄気味悪い」、時には皮膚に触れて痛痒く、イライラして感じの意で、江戸時代前期まで引き続いて用いられ、江戸後期では江戸から西の方言として、前代と同じ語義で使っている。(武田 泰)

/【日葡辞書】に「エズイ」で「恐ろしくてぞっとするような(もの)」とあり。≫

引用元:岩内方言辞典 見野 久幸著

室町時代の文献には「恐ろしい」、「薄気味悪い」、時には「皮膚が痛痒く、イライラした感じ」「いずい」と表現したと書かれています。

また、「エズイ」「恐ろしくてぞっとするような」という意味で、今も博多弁として使われています。

この「エズイ」が「イズイ」となったとも言われています。

ところで、「いずい」は体に違和感がある時に使いますが、北海道弁の「あずましくない」は居心地の悪さを言い表す時に使います。

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いずいを使うタイミングと使い方は?

猫のタマ編

飼い猫のタマが急に目をゴシゴシ、そして標準語でこう言います。

「あれ?何だかわかりませんが、目の周りが痒いような、痛いような、変な感じ!」

「タマ、目が痒いの?痛いの?どうしよう!」

「痒いような、痛いような」と言われたら、「こりゃ大変だ。病院へ行かなくちゃ」となりますが、こう言われたらどうでしょう?

「あれ?何だか知らないけど、目がいずいよぅ」

「タマ、目がいずいのかい?掻いてあげるよ。どれどれ」

こんな感じで事なきを得ます。

要するに、ちょっと掻いたり、さすったりすれば収まるレベルの身体の違和感を「いずい」と言います。

靴屋さんで

デパートの靴売り場でお気に入りの靴を見つけて履いてみました。

「あら可愛い!ちょっと履いてみましょう!あら、きついわ!」

「この靴、本当に25㎝ですか?ちょっときついのですが・・」

こんなふうに言ってみたいところですが、私は夢中になると、たとえデパートでも北海道弁が飛び出します。

「あらメンコイね~ちょっと履いてみるか!ん?いずっ!

「これ、本当に25㎝ですか?ちょっといずいんだけど・・」

ただし、道産子同士なら通じると正面きって「いずい」を連発するのはやめましょう。

若い店員さんがポカンとするだけです。

北海道以外でも使われている地域は?

「いずい」は仙台弁として認識されていることが多いのですが、北海道、青森、岩手、秋田でも同じように使われています。

「いずい」の意味はどこも同じですが、宮城県の伝統的方言では「えんずえ」と発音されます。

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いずいの反対語は?

「いずい」の反対語は「いずくない」です。

「この服をあなたに上げます。サイズは合いますか?」

「ちょうど良いです」

「この服、あんたに上げる。いずくないかい?」

「全然、いずくないよ

身体に不快感がなければ「いずくない」ことになり、晴れて洋服が貰えます。

いずいの悲しい使われ方とびっくり習慣とは?

昔、「いずい」は悲しい使われ方をされたり、びっくりするような習慣がありました。

「浜ことば」に「いずい」ということばがあります。もとは可愛らしい、愛らしいことを青森あたりでいったらしいのですが、いつの間にか目にごみが入って「いずい」といい、身体に合わぬ服をきると、なんとなく具合が悪くて「いずい」といいました。

青森の上北地方あたりから入ってきたものといわれています。「あずましくない」という意味にも用いられていました。

「いずくていられぬ」といえば、その家の家族関係がうまくいっていないので、いたたままれぬという意味にも使われました。

「子供がいずいさ」といえば、継母が子供を邪魔にすることでありましたし、若夫婦に同居する同居する婆さんも「いずい」でしょうなどといったものでした。

 目にごみが入ると、傍の人が舐める習慣がありました。娘さんが通ると若者が集まってきて、「いずくないか」と聞いて目を舐めりたがったものでした。(中略)

引用元:「日本とすてた言葉 北海道弁」藤島 範孝著

このように、家族関係がうまくいっていない時に「いずい」は使われていたのですね。

昔の若い娘さんも大変でした。家族でも親戚でもない人に目を舐められるなんて!

今はこの風習、なくなって良かったしょ!

まとめ

「いずい」「いずくない」は、なんとも表現しがたい感覚を現す言葉で、北海道や東北地方では今も使われている方言です。

若い世代は意味を知っていても、自分は使わないという人もいるかもしれません。

両親が使っている、または祖父や祖母と行き来して育った人は、違和感なく使っているようです。

この場合の「違和感なく使う」は「あずましく使う」や「いずくなく使う」とは言いません。

そう考えると、この「いずい」「いずくない」を使いこなせるようになったら、方言の達人と言えるかもしれませんね。

というわけで、北海道、東北地方の方言「いずい」「いずくない」の意味と使い方をご紹介しました。

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