私の住む北海道では夕方になると「今晩は」の他に「おばんです」と言います。
考えてみると「今晩は」だけで良いのに「おばんです」とは不思議な挨拶です。
「北海道でしか使っていない方言なの?」と調べたところ、わかったことがあります。
実は私たち道民は意識していませんが、「北海道民の言葉尻りが断定的できつく感じる」と他県の方に思われているようなのです。
そんなふうに思われていたなんてショック!道民を代表して弁明させて頂くと、そんな気持ちは毛頭ありませんです。
もしかすると「おばんです」は、「です」を最後につけることで丁寧な表現になるのではないか?これで他県の人とも仲良くお付き合いできるのではないか?と、道民が作り出した方言かもしれません。
そう思いながら調べると、北海道から離れたところでも「おばんです」を使う地域がありました。
「おばんです」以外のオバン系挨拶を使う地域もありました。
この記事では「おばんです」方言の意味、使われている地域、その由来と使い方、そしてオバン系挨拶のあれこれをご紹介します。
「おばんです」の正確な意味を知っておこう!
皆さん、すでに予測はされていると思いますが、「おばんです」の正式な意味は「今晩は」という夜の挨拶になります。
お-ばん【お晩】
(夜の挨拶の言葉。主に東日本で「-です」などの形で用いる)今晩は。
引用元:広辞苑第七版 岩波書店
最後にご紹介しますが、簡潔に「おばん」とだけ挨拶する地域もあります。
「おばんです」は方言なの?どこで使われている?
方言辞書を見ると「おばんです」が使われている地域が載っており、方言であることに間違いありません。
おばんです
青森県津軽・上北郡
岩手県和賀郡
山形県西置賜郡
神奈川県津久井郡
新潟県佐渡・上越
長崎県大村市
引用元:日本方言辞典 小学館
北海道は全域ですが、それ以外は各県の一部地域で「おばんです」は使われていました。
「おばんです」方言の由来は?
「おばんです」は「今晩は」を丁寧に表現するべく生まれたオバン系言葉のようです。
挨拶のことばにも、文法では説明のできない微妙な語感を感じさせるものがある。
共通語の「コンバン(今晩)ワ」は、これに丁寧な意を含ませて表現することは不可能である。
それに対して、オバン系の語は「オバンデス」「オバンデゴザイマス」、さらに「オバンデゴザイマシタ」のように、相手や状況に応じた表現ができて便利である。
引用元:北海道「古語」探訪 夏井邦男著
オバン系の私も「おばんです」に至った由来を推理してみました。
- 丁寧語「お」をつけて「おこんばんは」にしてみたけど、どうもおかしい。
- まれに「こんばんはです」と言う人もいるが、やっぱりおかしい。
- そうだ!「おこんばんは」と「こんばんはです」を足して2で割った「おばんです」が一番言いやすいではないか!
どうかしら?わたくしの推理力は。フフ
「父さん・・晩御飯まだかな?」
「おまえ言えよ」
「おばんです」方言の七変化活用!
丁寧派「おばんでございます」
「おはようございます」「こんにちは」と同じように「おばんです」と挨拶すれば、あとは堂々としていて大丈夫です。
それでも「ふざけてると思われるんじゃないか?」と一抹の不安をお持ちなら、「おばんでございます」と「ございます」をつけることで、「なんて丁寧な人なのだろう」と思われるに違いありません。
おばんで~す!のってるか~い⁉
おばんでございます。兄がほんとにすみません
勇敢派「おじんです」
北海道では勇敢なおじ様が「おじんです」と言いながら、夜の集まりに登場することがあります。
ども。おじんです!
ユーモアのある爺さんじゃね❣
は?見てわかるじゃろ!
ハイハイ、私はおばんですよ
若い人にはスルーされそうですが、こんな叔父様がいると堅苦しい雰囲気も和らぎます(たぶん)。
「おばんです」がさらに丁寧な挨拶へレベルアップ!
「おばんでした」と「でした」を使うと、より丁寧さが増す表現になるとあります。
これを「た」によって、上にある丁寧語の「デス」「マス」がさらに強められて、より度合いの強い丁寧表現、尊敬表現につながって行ったとする解釈は正鵠をえたものである。
ただし、敬語表現の発達しなかった北海道的なことばである、とばかりは言い切れないようである。
たとえば、四国の松山地方でも「おはようございました」がもう一つ丁寧な言い方だとされているからである。
引用元:北海道「古語」探訪 夏井邦男著
「おばんでした」が市民権を得たように、北海道にも「おはようございました」があってもいいようなものですが、残念ながらこちらは流行らなかったようです。
敬語表現の発達しなかった北海道だなんて、さらにショック。
これから「おはようございました」を流行らすぞ!
謝るからやめておくれ。
「おばんです」方言が消えてしまう?
北海道では高齢化のためか、「おばんです」が聞かれなくなっています。
そんなことを思っていたら、主人が電話口で「○○で~す。ども、おばんでしたぁ」と言っていました。
主人が高齢化しているのか、「おばんです」が方言として現役バリバリなのかは微妙です。
「おばんです」以外のオバン系挨拶とは?
調べたところ、地域によって多彩なオバン系挨拶がありました。
- おばん
- おばーん
- おばんですか
- おばんになったし
- おばんでござんす
- おばんでやんす
- おばんでおぜーやす
- おばんになりました
- おばんなりしてござりす・・・etc
女性から「おばんですか」と言われて「ハイ、おばんです」と返すことはコミュニケーション上、問題ないのでしょうか?
「おばんになったし」「おばんになりました」と言われても、どう返答して良いか悩みます。
おばんですか
全然おばんに見えないです!
まとめ
「おばんです」は「今晩は」を丁寧にした挨拶として、主に北海道や東北地方で使われている方言です。
さらに丁寧な言い方となる「おばんでした」と合わせて、最近では使う人が少なくなっています。
他県の方から「北海道の人は言い方がきつい」と言われないように編み出された挨拶かと思われますが、オバン系挨拶は各地にもある為、正直定かではありません。
この記事では「おばんです」方言の意味、使われている地域、その由来と使い方、「おばんです」以外のオバン系挨拶をご紹介しました。