私の住む北海道では相手に質問する時、「なして?」とたずねます。自問自答する時も「なしてかな?」「なしたんだろ?」とつぶやきます。
「どうして?」と言えば深刻になる場面でも、「なして?」と言えば魔法をかけたように場を和ませることができます。
どこでも魔法をかけられるわけではないので注意が必要ですが、それさえ注意すれば「なして」「なした」「なしても」は北海道の老若男女が安心して使える標準語レベルの方言なのです。
北海道だけでなく、他の地域でも使われていると聞いて、なして方言と言われるのかが不思議です。
この記事では「なして」方言の意味と使っている地域、なして方言を使うコツ、そして各地で使われている「どうして」に代わる方言をご紹介します。
「なして」方言の意味は?
なーして【副】
(東北地方・西日本で)どうして。なぜ。
引用元:広辞苑第七版 岩波書店
なぜか方言辞典に載っていないのですが、広辞苑をみると「なして」は東北地方・西日本の言葉とされています。
「なして」の意味は「どうして」「なぜ」になります。
- 「なして」→「どうして」「なぜ」
- 「なした」→「どうした」
- 「なしても」→「どうしても」
「どう」が「な」に代わるだけなので、意味もわかりやすいのではないでしょうか?
「なして」を使う地域は?
「なして」を使う地域は?
「なして」は北海道から九州まで広く使われているようです。
北海道から青森、秋田、岩手など東北地方、佐賀、長崎など九州地方でも使われています。
語尾をつける場合、東北以北では「なしてや」、九州地方では「なしてね」などとなり、こと
ばのイメージもやや変わります。
九州では単に「なし?」と言うところも。
引用元:かわいい方言手帳 ふるさとナマリ研究会著
北海道では「なしてや」「なしてね」は使わず、語尾をつける場合は「なしてさ」になります。
父さんの目玉焼き焦げてる!なしてさ⁉
「なして」方言を使うコツは?
「なして」のイントネーションは?
「どうして?」と聞く時、語尾を上げることもあれば、下げることもありますよね。
「なして?」も疑問形だからといって、毎回語尾を上げるわけではありません。
どちらかというと、語尾を下げて言うことが多いかもしれません。
どちらでも意味は通じるので、自由に発音してみましょう。
そして、「なして」「なした」「なしても」を正しく使うには場面に応じたちょっとしたコツがあります。
現在進行中の疑問には?
「まさに今、どうして?」と尋ねたい時、「なして?」を使います。
わっ!なして?
ワレワレモ焼肉食べたいデス
相手に呼び出されたら?
相手から呼び出された時は開口一番、「なした?」「なしたの?」と言います。
ビックボス、球場に呼び出してなしたの?
来年は羊ダンスに決定だ!
この場合「なして?」と聞くと、「なぜゆえに忙しい我らを呼び出したのですか?」と迷惑感が出るので注意しましょう。
なして呼んだのさ?
ビックボス作戦、失敗か・・
フレンドリーに聞きたい時は?
「どうした?」では深刻になりそうな場面に「なした」を使うと、フレンドリーな雰囲気が保てます。
なした?その髪型
お前こそなしたんだ?可愛いな
ここイチバンの場面では?
真剣勝負の場面では本来の「どうして?」を使いましょう。迫力が違います。
出ていくの?なして?
なしてじゃないの!どうしてもよ!
公式の場や真剣に話をする場所では魔法は効きません。「どうして」「なぜ」を使いましょう!
「なして」以外の方言は?
各地にある「どうして」に代わる方言の一部をご紹介します。
- あだん(東京都八丈島)
- ど(青森県上北郡)
- どいで(愛知県知多郡)
- どげで(鳥取県西伯群)
- どぉいで(山梨県)
- どげーしたけん(大分県)
- なじゃ(福島県会津)
- なっど(三重県)
- なじょにして(山形県米沢市)
- ないごち(鹿児島県大隅)etc
あだん?だんが⁉
「どうして?こんな場所に段が?」だと思われます。
まとめ
「なして」「なした」は「どうして」「どうした」と疑問を表す方言として、北海道をはじめ、東北、九州でも使われています。
「なしても」は「どうしても」という意味で、強い意志を表す時や、相手に意志を確認する時に使います。
「なして」「なした」「なしても」は北海道では標準語並みに使われており、場を和ますことのできる方言の一つです。
「なしてさ」「なしたのさ」「なしてもさ」と「さ」をつけると、より北海道弁に近づきます。
「なして」以外にも各地にはいろいろな言い方がありました。あり過ぎてご紹介しきれなかったことが残念です。
この記事では「なして」方言の意味と使われている地域、使う時のコツ、各地の「どうして」に代わる方言をご紹介しました。