夏場のお弁当、翌日のカレーライス、テーブルにほったらかしの肉じゃが・・これらを食べる前に北海道に住む年配の方は「これ、あめってないかい?」と心配します。
「アメル」って、なんだかカッコいい犬の名前みたいですが、意味はカッコよくありません。「アメてる~うそ~」と残念がる言葉なのです。
年配の私にとっても、あまりにも身近な言葉なので意識していなかったのですが、もしかすると「北海道以外の人は知らないのでは?」と思い、調べてみました。
すると、ある地域では食べ物だけでなく、頭や髪の毛が○○状態の時に「あめてる!」と言うことがわかりました。
というわけでこの記事では、「あめる」方言の意味、その土地ならではの使い方、そしてよく使う地域や会話例などをご紹介します。
「あめる」の意味は超シンプル
あ・める⦅自下一⦆
(東北地方北部で)食べ物が腐る。
引用元:広辞苑第七版 岩波書店
「あめる」は食べ物が腐るという意味です。
「くさる」よりも「あめる」が言いやすいのだろうか?と不思議にはなりますが、シンプルな意味なのです。
残念ながら、「あめるの由来はコレだ!」という決定的な説は探せませんでした。
食べ物が腐ると溶けた飴玉のようにネットリと糸を引くことから、「あめる」と言われるようになったのかな?と個人的には解釈しています。
頭もあめてる⁉
岩手県では、「あめる」以外に「すゑる」も、腐ったものを表す方言とされています。
あめる 岩手
(中略)ただ、江戸時代後期に岩手・盛岡の方言を採録した「御国通辞」(おくにつうじ)には江戸語の「すゑる」が当てられる。共通語でも「すえた臭い」と言うように「せる」は江戸時代には「飲食物が腐ってすっぱくなる」ことを表していた。このことから、「あめる」の一般的な用法は、野菜・肉・魚介類などの生鮮品が傷んでいる様子ではなく、調理・加工した食べ物が保存状態の悪さによって腐敗し始め、酸味を帯びたような変な臭いや味がする時に使われるようだ。
「あだまあめでら」と言えば、髪の毛を何日も洗わず脂ぎっている状態。緊張感が持続せずにだらけたり飽きたりした態度を指すこともある。
引用元:それいけ!方言探偵団 篠崎晃一著
一般的に、「すえる」は生鮮品、そして「あめる」は調理した物が腐ってしまう時に使うと書かれています。
そして、頭や髪の毛が脂ぎっている状態や、だらけた態度のことを「あだまあめでら」と言うそうです。人権問題にかかわりそうなので、言う相手を選ばないといけないですね。
ワタシ、きれい?
言いにくいけど、アタマあめってるよ
お城と桜を見るために海を渡ったアメル
北海道 松前、青森県、岩手県、秋田県、そして三重県で使われているとあります。
あめる
北海道・松前
青森県
岩手県
秋田県
三重県
引用元:日本方言辞典 小学館
アメルが津軽海峡を渡って、北海道最南端の松前町にたどり着いたところ、松前城と桜、そして美味しい松前漬けが気に入って、そこに落ち着いたのかもしれません。
北海道では松前町以外にも使われていますが、若い世代には通じなくなりつつある方言の一つです。
正しい使い方を覚えよう
「あめる」はお菓子や生鮮品よりも、カレーやお弁当、芋サラダなど、保存を間違えるとすぐに腐ってしまいそうな調理品に対して使います。
正しい「あめる」の使い方
バイキングがなんもない⁉
早く食べないとあめるでしょ!
はいあなた、あ~ん!
そのカレー、さっきアメってるって言ってなかった?
間違った「あめる」の使い方
この煎餅、すぐ食べないとあめるのよね!
そこのお母さん、煎餅はシケるだけでアメらないですよ。
お次の方々もチョット違いますよ~
はぁ~気持ち良くてあめりそうだわ
ご主人のコーヒー、あめらないか見張ってます
同じく。
「このミミズ、あめってるか食べてみて」
「ぼくが⁉」
ビックリな「腐る」方言あれこれ
- あまる
- いきりん・いきりるん
- うたう
- くたれる
- ござる
- とがめる
- ねばる
- ひっくさらら
- ほたる
- ぽちゃれる
- もせる
- よろこぶ
- わらう etc
各地の「腐る」を意味する方言は様々です。
「よろこぶ」「わらう」は岡山県の方言だそうです。語源が気になるところですね。
お姫様、昨日のカレーよろこんでますわ
それは結構。はよ持ってまいれ。
まとめ
「あめる」方言は「腐る」の意味がありますが、主に調理品が腐ることを指し、生鮮品やジュース、お菓子などには使いません。
北海道の一部や東北地方北部の方言とされています。ただ、北海道の年配者は使いこなしていますが、若い人にはすでに通じない方言かもしれません。
正式な由来や語源はわかりませんでしたが、飴のようにネバネバと糸を引くような状態が腐った物に似ているので、「あめる」「あめっている」と言われるようになったのかもしれません。
この記事では、「あめる」方言の意味とその土地ならではの使い方、そしてよく使う地域や会話例などをご紹介しました。