一所懸命は座右の銘に適してる?一生懸命との違いは由来にあるよ

四文字熟語

「一生懸命頑張ります」という言葉、とても便利ですよね。なにかを言わなきゃならない時、とりあえずこれを言っておけば間違いありません。これまで何度、「一生懸命」に助けられでしょう。

でも、「一生懸命」のほかに「一所懸命」という四字熟語があるのを知ってましたか?

私としては「そうだっけ?」とたいして気にしてなかったのですが、「一所」ってことは一生頑張らなくていい時に使うのかな?どうして「一所」なんだろう?座右の銘にしてもいいの?と、疑問が沸いてきました。

ちょっと調べてみようと思ったら、中世の将軍と家来の関係や、「一所懸命」を使っておられる有名なお二人の文章に出会いました。

この記事では、一所懸命の意味、由来、一生懸命との違い、使われている文章、座右の銘にお勧めの方、類義語と対義語をご紹介します。

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一所懸命の意味と由来は?

一所懸命の意味

いっしょ-けんめい【一所懸命】

①賜った1カ所の領地を生命にかけて生活の頼みとすること。また、その領地。太平記(33)「一の地を没収せらる」

②物事を命がけですること。必死。一生懸命。「試験を控えてーに勉強する」

引用元:広辞苑第七版 岩波書店

一所懸命の意味は、「物事を命がけですること」です。

「賜った1カ所の領地を生命にかけて生活の頼みとする」が「一所懸命」の本来の意味です。

そこから転じて、②「物事を命がけでする」の意味となりました。

一所懸命の由来

「一所懸命」の由来は、武士階級の領地意識にあります。

注意「一所懸命」は、もともと武士階級の領地意識から出たことばであったが、江戸時代に入って、それが薄れるにつれて、「一生懸命」ということばが生まれてきたといわれる。

引用元:大修館 四字熟語辞典

中世(鎌倉時代~室町時代)、将軍と家来の関係は「御恩」と「奉公」にありました。

御恩と奉公

将軍のために戦った家来には、将軍がその者の領地を守ることを約束しました。そのうえ、良い働きをした家来は、敵から奪った土地を貰うことができました。

中世は土地の管理が不十分で、法律などあってなかったようなものだったので横取りされたり、人の土地に勝手に住む者もいたのです。そのため、自分の領地は自分で守らなくてはなりませんでした。

自分の土地が大きくなると、それだけ豊かに暮らすことができます。今も、土地が貰えるなんて魅力的ですが、その頃は生きていくために必要な土地。まさに命がけで守る必要があったのです。

家の前に落とし穴掘っとこう!

そして一所懸命は、時代を経て一生懸命へと移り変わっていきました。

ここにその理由があります。

鈴木則郎(1983)は、『土地所有の観念の強い「一所懸命」や同一の場所を意味する「一所」という語は、場所の観念を失った「一生懸命」や「一緒」にとって代わられたのである。』と述べる。(中略)

引用元:https://core.ac.uk/download/pdf/235728044.pdf

太平記は、1318~1368年頃のおよそ50年間に起きた鎌倉幕府の滅亡や南北朝時代の争乱などを描いた軍記物語です。

江戸時代に入ると戦いも少なくなり、領土を奪って自分の物にすることも出来なくなりました。

武士といえども大名でもない限り、領地から収入を得ることは難しく、幕府や藩から給料(現金)や米を貰って生活していたようです。下級の武士は、慎ましい生活を余技なくされ、まさに一生懸命がピッタリくる生活だったかもしれません。

腹減ったなぁ~土地より米食いたい!

まとめ江戸時代までは「一所懸命」、江戸時代からは「一生懸命」へ移り変わりました。

では江戸時代の前は、今のように「一生懸命」ならぬ「一所懸命」を連発していたのかと思えば、そうでもないようです。

「一所懸命」の用例は「太平記」に3例あるものの、それ以前の資料には、軍事物語にも見られない。しかも「太平記」の3例も「一所懸命の地(所領)」という表現である。

引用元:https://core.ac.uk/download/pdf/235728044.pdf

1370年頃に書かれたとされる太平記の中に「一所懸命の地」が3回登場したものの、それ以前の資料にも例がないとあります。

そうなると「一所懸命」が使われた時期は、太平記の書かれた1370年~江戸時代が始まる1600年の間なのかもしれません。

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一生懸命との違いは?一所懸命が使われている文章は?

一生懸命との違い

「一生懸命」を四字熟語辞典や広辞苑で調べると、「一所懸命」が転じたものとあるので意味は同じです。どちらを使っても間違いではありません。

しかしながら、近年の新聞や雑誌、テレビ放送では「一生懸命」で統一されています。

一所懸命が使われているおふたりの文章

「一生懸命」と同じ意味でありますが、「一つのこと」を強調したい時は「一所懸命」を使うと効果的です。

その意図が伝わってくるおふたりの分章をご紹介します。

政治家ハマコーさんの著書

浜田幸一氏(愛称ハマコーさん)の本の題名は、「不肖ハマコーがゆく-一所懸命に闘い、一所懸命に死ぬ」です。

ハマコーさんが「一生懸命」よりも「一所懸命」を選んだことで、一つのことに専念するという決意が伝わってくるようです。

瀬戸内寂聴さん「今日を生きるための言葉」

【瀬戸内寂聴「今日を生きるための言葉」】第1392回

人間は、やがて訪れる死の時をなるべく忘れて生きようとします。死が目前に迫っても、奇跡を待ち、死から免れるような錯覚を持ちたがります。ですが、死があるからこそ、今を一所懸命に生きなければと思えることを忘れてはいけません。

瀬戸内寂聴

引用元:https://news.1242.com/article/226713

瀬戸内寂聴さんは、生きる意味を「一所懸命」の持つ特有の意味に重ね、私たちに伝えようと使っていらっしゃるように思います。

「一所懸命」と「一生懸命」は、よく注意しなければ気がつかない違いですが、「一所懸命」の方が一つの事に真剣に集中しようとする決意がより強く伝わってくるように思います。

新人として一所懸命頑張ります!

あの時、一所って言っちゃったからずっと窓際なんだろか?

一所懸命を座右の銘にお勧めの方

政治家や日本を代表する文豪も使う「一所懸命」を座右の銘としてお勧めしたい方はこんな方です。

  • ハマコーさんや瀬戸内寂聴ファンの方
  • 「一生懸命頑張ります」がありふれていて真実味が伝わらないと思う方
  • まさしく土地や家を買い、一所懸命に守っていこうと考えている方
  • 他の人と何気なく差をつけたい方
  • 一生頑張るのは長すぎると感じる方

一生懸命幸せに・・あ、間違えました。一所懸命にします

一所懸命の類義語と対義語は?

一所懸命の類義語と対義語はたくさんあり、初めて知る四字熟語もありました。

類義語
  • 不惜身命(ふしゃくしんみょう)自分の体や命を惜しまず仏道に尽くすこと(仏教)が転じて、国や君主のために尽くすこと。
  • 一意奮闘(いちいふんとう)心を一つに集中し、奮い立って闘うこと。
  • 一心不乱(いっしんふらん)一つの事に集中して気をそらさないこと。
  • 一意専心(いちいせんしん)心を一つに集中し、他に気を向けないこと。

一心不乱にも一意専心にもなれるマタタビって最強!

「一意専心(いちいせんしん)」を座右の銘にして全力発揮するぞ
心を集中させるということが一意専心になります。座右の銘として手元におけば、いざという時に頭に浮かび、実力以上の力を発揮できると、私は確信しています。一意専心(いちいせんしん)の意味、座右の銘としてお勧めしたい方、由来、類義語をご紹介します。
対義語
  • 意志薄弱(いしはくじゃく)積極的な意志がなく、決断力にかけること。
  • 軽佻浮薄(けいちょうふはく)言動が軽はずみで浮ついていること。
  • 酔生夢死(すいせいむし)何をするでもなく、目的を持たず、一生を無為に終えること。

ネコが酔生夢死だなんて言わせません!

まとめ

「一所懸命」の意味は、「物事を命がけですること」です。

由来は、鎌倉時代の武士階級の間で賜った領地を命がけで守ることから、「賜った一所懸命の地」が転じて、「一所懸命」が使われるようになりました。

そして、土地の概念が変化した江戸時代には「一生懸命」が使われるようになりました。

「一生懸命」がありふれていると感じる方、人とは違う印象を残したい方へ、「一所懸命」を座右の銘にすることをお勧めします。

類義語には、「不惜身命」「一意奮闘」「一心不乱」「一意専心」があります。

対義語には、「意志薄弱」「軽佻浮薄」「酔生夢死」があります。

この記事では一所懸命の意味、由来、一生懸命との違い、使われている文章、座右の銘にお勧めの方、類義語と対義語をご紹介しました。

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